5.3.19.8. RI線源によるエネルギー分布

e-type = 28,29 : 放射性核種とその放射能(単位Bq)を与えることにより、その放射性核種の崩壊に伴って放出される \(\alpha\) 線、 \(\beta\) 線(オージェ電子含む)、 \(\gamma\) 線、または自発核分裂中性子を線源とした計算が実行できます。 なお、 proj = all と設定することで、放射性核種が放出可能な放射線種( \(\alpha\) 線、 \(\beta\) 線、 \(\gamma\) 線、自発核分裂中性子)全てが線源となります。 放出される粒子のスペクトル計算には、放射性核種崩壊データベース DECDC [1] が使用されます。 なお、このデータベースはICRP Publication 107と同等で、半減期1分以上のほぼ全ての核種(メタステーブル含む)に対する崩壊データベースが含まれています。 この機能を使う場合は、崩壊データファイル RIsource.dat が置かれたフォルダを[parameters]セクションにおいて file(24) (D=c:/phits/data/) により指定する必要があります。 e-type = 28 の場合は、崩壊データベースにより計算された放出強度にしたがって、各エネルギーの粒子を生成します。 e-type = 29 の場合は、崩壊データベースにより計算された全てのエネルギー点に同数の粒子を生成させ、その放出強度にしたがって、各エネルギーのウエイトを変化させます。

表 5.3.216 ni

説明

放射性核種の数。放射性核種とその放射能は次の様なフォーマットで指定する。 (RI(i),A(i),i=1,ni) ただし、核種 RI(i) は137CsあるいはCs-137の書式( 4.7 章 )で指定する。放射能 A(i) はBq(ベクレル)単位で指定する。

表 5.3.217 dtime

説明

(D= \(-10.0\) )

時間経過の指定オプション。 dtime>0 (単位はsec):指定した時間が経過した時点の指定核種及びそ の娘核種の放射能による \(\alpha\) 線, \(\beta\) 線(オージェ電子含む), \(\gamma\) 線、自発核分裂中性子を設定します。 各RIの放射能は、 dtime 経過後の値に減衰します。 例えば、半減期1分のRIを100Bqで指定し、 dtime=60.0 と設定した場合、 そのRIの放射能は50Bqと見なされます。 dtime=0:指定した放射能(時間経過なし)による \(\alpha\) 線, \(\beta\) 線(オージェ電子 含む), \(\gamma\) 線、自発核分裂中性子を設定します。 ただし、指定した核種の娘核のメタステーブルから放出される \(\gamma\) 線については、 そのメタステーブルの半減期が1分以上の場合は考慮されません。 dtime**<0:指定した放射性核種の半減期 \(\times|\) dtime \(|\) が経過 した時点の指定核種及びその娘核種の放射能による \(\alpha\) 線, \(\beta\) 線(オー ジェ電子含む), \(\gamma\) 線、自発核分裂中性子を設定します。 ただし、 dtime>**0 の場合と異なり、放射能の絶対値は減衰しません。 例えば、半減期1分のRIを100Bqで指定し、 dtime= \(-1.0\) と設定した場合、 そのRIの放射能は100Bqのまま娘核種の崩壊を考慮可能です。 放射平衡まで達する時間が分からない場合は、 dtime= \(-10.0\) のように長めの値を設定しておくと便利です。 dtime<0 とする場合、親核と娘核(例えばCs-137とBa-137m)を同時に指定 することはできません。

表 5.3.218 actlow

説明

(D=1.0e-10)

放射能の下限の指定オプション(Bq)。指定した時間経過後の放射能 がこの値より小さい場合、その放射性核種の \(\alpha\) 線, \(\beta\) 線(Auger 電子、内部転換電子含む), \(\gamma\) 線(特性X線含む)は線源に設定されません。

表 5.3.219 norm

説明

(D=0)

線源強度の規格化オプション。 0:1秒あたり(/sec)の量を出力するように規格化します。その際、線源強度は、 Bq単位で指定した放射能強度( dtime>0 の場合はその崩壊も考慮した後) とします。 1:崩壊に伴って放出される \(\alpha\) 線, \(\beta\) 線(Auger電子含む), \(\gamma\) 線1つあたりの量を出力するように規格化します。(通常のPHITSの規格 化方法に準拠)

表 5.3.220 iaugers

説明

(D=0)

Auger電子(内部転換電子含む)の取扱オプション( proj=electron のみ有効)。 0:Auger電子を含む( \(\beta\) 線 + Auger電子 )。 1:Auger電子を含まない( \(\beta\) 線のみ)。 2:Auger電子のみを取り扱う。

表 5.3.221 iannih

説明

(D=1)

電子対消滅により生成される光子(消滅光子)の取扱オプション ( proj=photon のみ有効)。 0:消滅光子を含む。 1:消滅光子を含まない。 別のマルチソースで proj = positron として陽電子の放出を明示的に考慮 する場合は,消滅光子の2重カウントを防ぐため,こちらのオプションを選択し てください。

表 5.3.222 icharctx

説明

(D=0)

特性X線の取扱オプション(proj=photon のみ有効)。 0:特性X線を含む( \(\gamma\) 線 + 特性X線)。 1:特性X線を含まない( \(\gamma\) 線のみ)。 2:特性X線のみ取り扱う。

マルチソースでこのRI線源機能を使用する際は、 <source> = 1.0 とし、 totfact を以下のように指定してください。

  • マルチソースの全てで e-type = 28,29 を使用する場合は、 <source> の個数を入力します。

  • マルチソースで e-type = 28,29 以外を含む場合は、各 <source> が絶対強度となるように設定し、すべての <source> の和を入力します。

なお、上記の方法で決めた値に \(-\) をつけ、負の値として totfact を指定した場合は、各線源の粒子を同確率で発生させ、与えられた放射能(Bq数)の比に応じて各粒子のウエイトを変更します。 放射能が大きく違う複数の線源を定義する場合は、 totfact を負で与えることにより、 Bq数の大小にかかわらず統計量を増やすことができます。

e-type = 28,29 の場合の入力例は以下のようになります。

[ Source ]
  totfact = 2.0
  <source> = 1.0
    s-type =   1
    proj =  photon
    dir =   all
    r0 =   0.
    z0 =   0.
    z1 =   0.
    e-type =   28
      ni =   1
        Cs-137  100.
      dtime =  -10.0
      actlow =   1.0
  <source> = 1.0
    s-type =   1
    proj =  photon
    dir =   all
    r0 =   0.
    z0 =   0.
    z1 =   0.
    e-type =   28
      ni =   1
      Cs-134  100.
      dtime =  -10.0
      actlow =   1.0

ここでは、Cs-137とCs-134が共に100Bqずつ存在し、それらが放射平衡になった状況を線源として指定しています。 また、 actlow を1(Bq)することで、この数値以下の放射能の影響を無視しています。

また、例えば、Cs-137の崩壊に伴って放出されるphotonとelectronを同時に考慮したい場合は、photonとelectronの2つの <source> セクションをもつマルチソースを定義します。 両者の崩壊数は同じとなるため、ソースの相対比は1.0と指定します( <source>=1.0 )。 その際、マルチソース全体の規格化定数 totfact は、各 <source> の和となるため、2.0と指定します。