5.3.19.10. 宇宙線フラックスのエネルギー・角度分布

e-type = 25,26: 宇宙空間及び大気圏内における宇宙線フラックスのエネルギー及び角度分布を、絶対値も含めて再現する線源です。 e-type = 25 の場合は、宇宙線モデルで計算したフラックスに従って、各エネルギーの粒子を生成します。 e-type = 26 の場合は、各エネルギー群に同数の粒子を発生させ、宇宙線モデルで計算したフラックスに従って、各粒子のウェイトを変化させます。

e-type = 25,26 の場合、各マルチソースの <source> は 1.0 とする必要があります。 また、宇宙線線源を利用する場合は、totfactは線源面積(例えば、s-type=9 の場合は \(\pi (r_2)^2\) )としてください。そうすれば、タリー結果が1線源発生当たり(/source)ではなく1秒当たり(/sec)に規格化されます(ただし、SEPモードの場合は1イベントあたりに規格化されます)。 totfact を負値で指定した場合は、各マルチソースから同数の粒子を発生させますので、フラックスの大小にかかわらず統計量を増やすことができます。 なお、 e-type = 25,26 を使う場合は、全てのマルチソースで同じ e-type 及び icenv を指定してください。

表 5.3.223 icenv

説明

(D=0)

宇宙線環境パラメータ。 1-5:PARMA/EXPACS [1] で計算した大気圏内における銀河宇宙線 (Galactic Cosmic-Ray, GCR) モード。 それぞれ、理想大気中(=1)、地表面(=2)、航空機コックピット(=3)、航空機客室 (=4)、ブラックホールモード(=5)を表します。 icenv= 2-4の場合は、周辺環境パラメータ environ を定義する必要があります。 ブラックホールモードは、地面からの反射中性子を全てカットするので、大地を含んだシミュレーションに最適です(使い方は phits/sample/source/Cosmicray/GCR-blackhole/readme.txt を参照)。なお、周辺環境が影響するのは中性子とミューオンのみで、それ以外の粒子に対しては icenv= 1-5 は同じ結果を与えます(ミューオンに対しては、icenvが2もしくは5のときに地表面補正が適用され主に水平方向のフラックスが上昇します)。また、 s-type=9 かつ dir=iso とした場合、大気圏内の複雑な宇宙線角度分布も自動で再現します(z軸+方向が天頂角方向)。 粒子種類(proj)は、中性子、陽子、重イオン( \(Z\le28\) )、 \(\mu\) 粒子、光子、電子、陽電子が指定可能です。 0:DLRモデル [2] で計算した宇宙空間における銀河宇宙線(GCR)モード。 粒子種類(proj)は、陽子及び重イオン( \(Z\le28\) )が指定可能です。 また、 alti を指定した場合は、磁気圏の影響を考慮して [3] 、その高度における典型的な衛星軌道上 [4] でのGCRフラックスを再現します。 \(-1\) :Tylkaモデル [5] で計算した宇宙空間における太陽高エネルギー粒子(Solar Energetic Particle, SEP)モード。 environ パラメータを指定することにより、4種類の太陽高エネルギー粒子イベント(Solar Particle Event, SPE)から再現するフルエンスを選ぶことができます。 粒子種類(proj)は陽子のみが指定可能です。 このモードを選択して線源面積を totfact に指定した場合、タリー結果は (/sec) ではなく各イベントの積算値 (/SPE) に規格化されます。 \(-2\) :SPENVISコード [6] に組み込まれたAP-8モデル [7] を使って計算した典型的な衛星軌道上 [8] での捕捉陽子(Trapped Proton, TP)モード。 粒子種類(proj) は陽子のみが指定可能です。

表 5.3.224 nm

説明

(D= \(-200\) )

エネルギー群数。 nm を正の数で与えた時は線形で等分点を決定し、負の数で与えた時は対数 で等分点を決定。

表 5.3.225 eg1

説明

エネルギー分布のカットオフ最小値[MeV/n]。 デフォルト値は、中性子は1.0e-8、その他の粒子は大気圏内モード (icenv>0)の場合は1.0e-2、宇宙空間モード(icenv \(\le\) 0)の場 合は1.0となります。

表 5.3.226 eg2

説明

エネルギー分布のカットオフ最大値[MeV/n]。 デフォルト値は、中性子、光子、電子、陽電子は1.0e4、 \(\mu\) 粒子は1.0e8、 SEP陽子は1.0e5、その他の粒子は1.0e6となります。

表 5.3.227 ag1

説明

(D=-1.0)

大気圏内宇宙線線源モードで角度分布を計算する天頂核の下限値[ \(\cos\theta\) ]

表 5.3.228 ag2

説明

(D=1.0)

大気圏内宇宙線線源モードで角度分布を計算する天頂角の上限値[ \(\cos\theta\) ]。 s-type=9 の場合は、実際の線源粒子の方向も ag1 から ag2 の範囲に限定されます。 それ以外の場合は、 ag1,ag2 は線源エネルギー分布の計算のみに影響し、 実際の線源粒子の方向は dir パラメータなどにより決定されます。 その際、 totfact を指定した立体角で除することにより (/s/sr) 単位で規格化した宇宙線源を模擬できます。 詳しくは phits/sample/source/cosmicray/GCR-parallel をご参照ください。

表 5.3.229 solarmod

説明

(D=0)

銀河宇宙線フラックスを計算するために必要となる太陽活動度(W-index)。 icenv \(\ge\) 0のみ有効。 太陽活動が活発になると、太陽風の影響により銀河宇宙線のフラックスは低下します。 太陽極小及び極大期におけるおおよその値はそれぞれ0と150程度ですが、これよ りも低くなる場合や高くなる場合もあります。 このパラメータを指定しない場合は、 icyear, icmonth, icday で指定した 年月日のW-indexをデータベースから参照し、デフォルトの日付から推定した W-indexは0.1です。 そのデータベースには、1951年以降は中性子モニタの計数率 [9] から 推定した各日のW-indexが、それ以前はUsoskinら [10] が太陽黒点数よ り再構築した太陽活動度より推定した各月のW-indexが格納されています。 なお、データベースのない年月日(1611年以前、1647-1699年、及び直近の数か 月)を指定した場合、「Specified date is wrong (too past or too recent)」 というエラーが出ます。 また、直近のW-indexはWASAVIESホームページ [11] よりダウンロード 可能です。

表 5.3.230 icyear

説明

(D=2009)

太陽活動度を計算するための年。 icenv \(\ge\) 0かつ solarmod を指定しない場合のみ有効となります。 なお、1614年-1950年を指定した場合は黒点観測データから推定した月平均の太陽活動度、 1951年以降を指定した場合は地上中性子モニタ計数率から推定した日平均の太陽活動度が利用されます。

表 5.3.231 icmonth

説明

(D=10)

太陽活動度を計算するための月。 icenv \(\ge\) 0かつ solarmod を指定しない場合のみ有効となります。

表 5.3.232 icday

説明

(D=20)

太陽活動度を計算するための日。 icenv \(\ge\) 0かつ solarmod を指定しない場合のみ有効となります。

表 5.3.233 depatom

説明

大気深度(g/cm \(^2\) )。 大気圏内モード(icenv>0)のみ有効。 このパラメータを指定しない場合は、 alti で定義した高度(km)よりUS Standard Atmosphere 1986 [12] を使って大気深度を計算します。 デフォルトの高度(=0 km)から計算した大気深度は約1033 g/cm \(^2\) です。

表 5.3.234 alti

説明

(D=0)

大気圏内モード( icenv>0 )の場合は高度(km)を表し、 depatom を指定しない場合のみ有効。 銀河宇宙線モード(icenv=0)及び捕捉陽子モード(icenv=-2)の場合 は、衛星軌道の平均高度(km)を表し、現在のところ低地球軌道(Low Earth Orbit, 340-420~km)のみ指定可能。

表 5.3.235 rigid

説明

宇宙線のカットオフリジディティ(GV)。 カットオフリジディティとは、磁気圏を透過可能な宇宙線の最低リジディティ (磁場による曲がりにくさ)を表しており、極域で低く赤道付近で高くなります (おおよそ0-18 GV程度)。 大気圏内モード(icenv>0)の場合は、地球に垂直に入射した場合のカット オフリジディティ(vertical cut-off rigidity)を表し、このパラメータを指定 しない場合、 glat 及び glong で指定した緯度・経度より MAGNETOCOSMICS [13] で構築したデータベースを使って自動的に決定し ます。 デフォルトの glat 及び glong から推定したカットオフリジディティ は0 GVです。 宇宙空間モード(icenv \(\le\) 0)の場合は、 rigid パラメータで指定し た値以下のリジディティを持つ宇宙線を全てカットし、そのデフォルト値は0 GV です。

表 5.3.236 glat

説明

(D=90)

カットオフリジディティを計算するための緯度(degree)。 正値が北緯、負値が南緯を表し、 icenv>0 かつ rigid を指定しない場 合のみ有効となります。

表 5.3.237 glong

説明

カットオフリジディティを計算するための経度(degree)。 正値が東経、負値が西経を表し、 icenv>0 かつ rigid を指定しない 場合のみ有効となります。

表 5.3.238 environ

説明

大気圏内の中性子フラックスに関する周辺環境パラメータ(icenv= 2-4)もしくは SEP イベントID(icenv= \(-1\))。 icenv= 2の場合は地中の水分含有率、 icenv= 3及び4の場合は航空機の重量(100 ton)を表し、そのデフォルト値は0.15となります。 ただし、どちらの量も、理想的な環境における中性子フラックスからの「ゆがみ」の大きさを表すためのパラメータであり、純粋な物理量ではなく、条件により調整が必要となることに注意する必要があります。 icenv= \(-1\) の場合は再現する SPE の種類を1-5の整数で表し、それぞれ、Feb. 1956(=1、デフォルト)、Nov. 1960(=2)、Aug. 1972(=3)、Sep. 1989(=4)、Jan. 2005(=5)に発生した SPE に対応しています。