5.2.3. 計算打切エネルギー、モデル切り替えエネルギー

表 5.2.18 emin(i)

i

説明

1
(D=1.0e-3)
陽子の計算打切エネルギー[MeV]。
2
(D=1.0e-11)
中性子の計算打切エネルギー[MeV]。
3
(D=1.0e-3)
正パイオンの計算打切エネルギー[MeV]。
4
(D=1.0e-3)
中性パイオンの計算打切エネルギー[MeV]。
5
(D=1.0)
負パイオンの計算打切エネルギー[MeV]。1MeVより小さくした場合は、エネルギーカットオフの際に負パイオンの吸収反応が起こらなくなります。
6
(D=1.0e-3)
正ミューオンの計算打切エネルギー[MeV]。
7
(D=1.0e-3)
負ミューオンの計算打切エネルギー[MeV]。
8
(D=1.0e-3)
正ケイオンの計算打切エネルギー[MeV]。
9
(D=1.0e-3)
中性ケイオンの計算打切エネルギー[MeV]。
10
(D=1.0e-3)
負ケイオンの計算打切エネルギー[MeV]。
11
(D=1.0e-3)
その他の粒子(ityp=11)の計算打切エネルギー[MeV]。
12
(D=1.0e+9)
電子の計算打切エネルギー[MeV]。
13
(D=1.0e+9)
陽電子の計算打切エネルギー[MeV]。
14
(D=1.0e-3)
光子の計算打切エネルギー[MeV]。
15
(D=1.0e-3)
重陽子の計算打切エネルギー[MeV/n]。
16
(D=1.0e-3)
3重陽子の計算打切エネルギー[MeV/n]。
17
(D=1.0e-3)
3Heの計算打切エネルギー[MeV/n]。
18
(D=1.0e-3)
4Heの計算打切エネルギー[MeV/n]。
19
(D=1.0e-3)
原子核の計算打切エネルギー[MeV/n]。

ここで、MeV/nは核子あたりのMeV。 粒子番号iは 表 4.7.1 を参照。

表 5.2.19 dmax(i)

説明

(D=emin(i))
(i=1,12,13,15,18)粒子番号iの粒子に対するライブラリー(電子・陽電子は原子反応ライブラリー、それ以外は核データライブラリー)を利用する際の上限エネルギー[MeV](重陽子及び \(\alpha\) 粒子に対しては[MeV/n])。なお、i=3-11,16,17,19に対するライブラリーは、現在のところ使用できません。
(D=20.0)
(i=2)中性子に関する核データライブラリーを利用する際の上限エネルギー[MeV]。
(D=1.0e+3)
(i=14)光子に関する原子反応ライブラリーを利用する際の上限エネルギー[MeV]。
PHITSのパッケージに含まれているライブラリーはi=1,2,12,13,14のみなので、これら以外の粒子についてはご自身でライブラリーを用意して使用してください。詳しくは 13.3 章 をご参照ください。
表 5.2.20 dpnmax

説明

(D=0)
光核反応ライブラリーを利用する上限エネルギー[MeV]。なお、dmax(14)は光子の原子反応(コンプトン散乱、光電効果など)に対するライブラリー上限エネルギーである点に注意。
表 5.2.21 lib(i)

説明


dmax(i)やdpnmaxを指定した際、最優先で利用される核データライブラリーの拡張子。ただし、dmax(2) \(\le\) 20の場合は、アドレスファイル("xsdir")で最初に書かれたファイル("xsdir.jnd"の場合はJENDL-4.0)が優先されます。また、指定された核種に対するライブラリーがない場合、警告メッセージが表示されたうえで、20 MeV以下の中性子に対しては上記のアドレスファイルにある先頭ライブラリー、それ以外の粒子に対しては核反応モデルが自動的に利用されます。
(D=20h)
(i=1)陽子に対する核データライブラリ。デフォルト(20h) はJENDL-5 [1]
(D=20c)
(i=2)中性子に対する高エネルギー核データライブラリ。デフォルト(20c)はJENDL-5。dmax(2) \(\le\) 20の場合は適用されないことに注意。
(D=20u)
(i=14)光子に対する核データライブラリ。デフォルト(20u)はJENDL-5。光子の原子反応に対するライブラリではないことに注意。
(D=20o)
(i=15)重陽子に対する核データライブラリ。デフォルト(20o)はJENDL-5
(D=20a)
(i=18) \(\alpha\) 粒子に対する核データライブラリー。デフォルト(20a)はJENDL-5
表 5.2.22 esmin

説明

(D=0.001)
電子・陽電子を除く荷電粒子のrange計算の最小エネルギー[MeV/n]。
表 5.2.23 esmax

説明

(D=300000)
電子・陽電子を除く荷電粒子のrange計算の最大エネルギー[MeV/n]。
表 5.2.24 cmin(i)

説明

(D=1.0)
粒子番号iの粒子の反応計算打切エネルギー[MeV]。(ただし、i=15-19の場合は[MeV/n]。)cmin(i)未満のエネルギーで起こる反応や散乱( \(\delta\) 線生成も含みます)は無視する。
ただし、中性子、電子・陽電子、光子のデフォルト値はemin(i)です。また、重陽子(i=15)のデフォルト値は0.001 MeV/nです。
表 5.2.25 etsmin

説明

(D=1e-6)
飛跡構造解析を実施する電子(もしくは陽電子)のエネルギーの下限値[MeV]。
表 5.2.26 etsmax

説明

(D=1e-2)
飛跡構造解析を実施する電子(もしくは陽電子)のエネルギーの上限値[MeV]。
表 5.2.27 tsmax

説明

(D=1e-3)
陽子やイオンに対する飛跡構造解析を行う最大エネルギー[MeV/n]。飛跡構造解析を行わない場合は、ATIMAなど通常の阻止能モデルを使って電離エネルギー損失を計算します。各自でコンパイルしたPHITSでモデルKURBUCを使った陽子やイオンに対する飛跡構造解析を行いたい場合は、 10.4 章 をご参照ください。

emin, esmin, cmin, etsminによって各々のエネルギー領域に制限を与える際は、その値未満となります。したがって例えば、emin(1)で陽子の計算打切エネルギーを指定した場合、丁度その値のエネルギー(デフォルトだと0.001 MeV)をもつ陽子は計算打切とはなりません。一方、dmax, esmax, etsmaxの場合は、その値以下が対象となります。

輸送粒子のエネルギーがeminより低くなると、エネルギーカットオフとなり、輸送計算が打ち切られます。その際、残りの運動エネルギーはその場所に付与され、中性子を除く 表 4.7.3 の粒子は崩壊します。また、陽電子は対消滅を起こします。

emin(2)やdmax(2)を指定しない場合、これらの値はnucdataオプションによって自動的に調整されます。例えば、nucdata=0の場合、emin(2)=dmax(2)=1.0e-3となります。また、emin(12,13)やdmax(12,13)を指定しない場合、これらの値はnegsオプションによって自動的に調整されます。例えば、negs=1の場合、emin(12,13)=0.1、dmax(12,13)=1.0e+3となります。詳細は、 表 5.2.28 をご覧ください。

粒子のエネルギーを \(E\) とした場合に、emin \(<E<\) dmaxの範囲にあるエネルギーをもつ粒子の反応や散乱がライブラリーにより計算されます。emin>dmaxとすれば、ライブラリーを用いた計算をしません。中性子と光子のライブラリーの上限は、それぞれ20 MeVと100 GeVです。また、EGS5を利用しない場合の電子と陽電子のライブラリーの上限は10 GeVとなります。

エネルギー \(E\) の荷電粒子について物質中の飛程(range)を計算する際、esmin \(<E<\) esmaxの範囲でデータテーブルを作成して計算します。より小さい、もしくは、より大きなエネルギーを取り扱いたい場合には、esminやesmaxを設定してください。通常はデフォルト値のままで計算を行います。

荷電粒子の計算打ち切りエネルギーeminをesminよりも小さくすることはできません。その場合、eminは自動的にesminの値に修正されます。

[Frag Data]で考慮したい最小の入射エネルギーに応じて、cmin(i)を設定してください。

etsminは、原理的には1 meVまで設定可能ですが、計算時間が膨大になりますので、1 eV程度に設定することをお勧めします。etsmaxは、1 keVよりも大きく設定する必要があります。原理的には極めて大きい値も設定可能ですが計算時間が膨大になりますので、現実的には100 keV以下に設定することをお勧めします。飛跡構造解析の場合は、必ずEGS5モードを用いてemin(12-13)を1 keVに設定する必要があります。

表 5.2.28 negs

説明

(D=-1)
光子・電子・陽電子の輸送に関するオプション。
=-1
PHITSオリジナルモデルを用いて光子のみ輸送する。デフォルト値であるemin(14)=0.001, dmax(14)=1000.0が使用されるが、これらのパラメータを指定した場合は、それらの値が優先される。
=0
電子・陽電子・光子の輸送を行わない。emin(14)=dmax(14)=1.0e+9に自動調整される。
=1
EGS5を用いて光子・電子・陽電子を輸送する。emin(12,13)=0.1, emin(14)=0.001, dmax(12-14)=1000.0に自動調整されるが、これらのパラメータを直接指定した場合は、それらの値が優先される。このオプションを使用する場合は、file(1)もしくはfile(20)の設定が必要になる。
=2
negs=1と同様だが、電子・陽電子・光子の上限エネルギーdmax(12-14)が1 GeVではなく10 TeV(1e+7)に自動調整される。
表 5.2.29 nucdata

説明

(D=1)
中性子に関するライブラリーの使用についてのオプション。
=0
中性子に関するライブラリーを使用しない。emin(2)=dmax(2)=1.0e-3に自動調整し、中性子の輸送計算をライブラリーを使用せずに実行する。ただし、emin(2)やdmax(2)を直接指定した場合は、それらの値が優先される。
=1
中性子断面積データライブラリーJENDL-4.0に合わせたデフォルト値(emin(2)=1.0e-11, dmax(2)=20.0)を使用する。ただし、emin(2)やdmax(2)を直接指定した場合は、それらの値が優先される。このオプションを使用する場合は、file(1)もしくはfile(7)の設定が必要になる。
表 5.2.30 ieleh

説明

(D=0)
電子、陽電子の輸送オプション。
=0
エネルギー \(e\) がdmax(12)以上の場合、減速や反応を行わない。
=1
エネルギー \(e\) がdmax(12)以上の場合、ウエイト値wgtをwgt \(=e/\) dmax(12)に変更し、dmax(12)の値をエネルギーとして輸送計算を実行する。

negs=1,2以外を設定した上で、輸送させる電子・陽電子のエネルギーがemin(12,13)とdmax(12,13)の範囲に入ると、PHITSオリジナルの電子輸送アルゴリズムが動作します。ただし、このアルゴリズムの利用は非推奨であり、計算精度も保証していないのでご注意ください。

表 5.2.31 ejamnu

説明

(D=20.)
核子の核反応モデルに関するBertini(もしくはJQMD)とJAMへの切り替えエネルギー[MeV]。
表 5.2.32 ejampi

説明

(D=20.)
パイオンの核反応モデルに関するBertiniとJAMの切り替えエネルギー[MeV]。
表 5.2.33 eisobar

説明

(D=0.0)
isobar=1の時のisobarモデルの上限エネルギー[MeV]。
表 5.2.34 isobar

説明

(D=0)
isobar モデルのオプション
=0
isobar モデルを用いない
=1
isobar モデルを用いる
表 5.2.35 eqmdnu

説明

(D=20.)
核子の核反応モデルに関するBertiniとJQMDの切り替えエネルギー[MeV]。
表 5.2.36 eqmdmin

説明

(D=10.)
JQMD適用の下限エネルギー[MeV/n]。
表 5.2.37 ejamqmd

説明

(D=3000.)
原子核の核反応モデルに関するJQMDとJAMQMDの切り替えエネルギー[MeV/n]。
表 5.2.38 inclg

説明

(D=1)
核子、パイオン、軽イオン( \(d,t,^3\) He, \(\alpha\) )の核反応モデルとしてINCLを適用する場合のオプション。
=0
INCLを使用しない。核子の反応については、ejamnuとeqmdnuの値に応じて、JAM、JQMD、Bertiniのモデルが適用される。パイオンの反応については、ejampiの値に応じて、JAMかBertiniが適用される。軽イオンの反応についてはJQMDが適用される。
=1
核子、パイオン、軽イオンが関与する核反応でINCLを使用する。
=2
核子とパイオンが関与する核反応でINCLを使用する。
表 5.2.39 einclmin

説明

(D=1.0)
INCLが適用される下限のエネルギー[MeV/n]。
表 5.2.40 einclmax

説明

(D=3000.0)
INCLが適用される上限のエネルギー[MeV/n]。
表 5.2.41 incelf

説明

(D=0)
陽子、中性子、 \(\alpha\) 入射反応においてINC-ELFを核反応モデルとして使用する。
=0
INC-ELFを使用しない。
=1
陽子、中性子、 \(\alpha\) 入射反応にINC-ELFを使用する。
=2
陽子、中性子入射反応にINC-ELFを使用する。
表 5.2.42 eielfmin

説明

(D=1.0)
INC-ELFが適用される下限のエネルギー[MeV]。
表 5.2.43 eielfmax

説明

(D=3500.)
INC-ELFが適用される上限のエネルギー[MeV]。
表 5.2.44 irqmd

説明

(D=0)
核反応モデルとしてJQMDかJQMD-2.0を使用する。
=0
JQMDを使用する。
=1
JQMD-2.0を使用する。

\(d, t, ^3\) He, \(\alpha\) 及び原子核を輸送している場合、eqmdmin以下のエネルギーではJQMDによる原子核反応をさせません。低エネルギーでのJQMDの適用には限界がありますし、通常の物質中ですと低エネルギーでは飛程が短いので核反応を考慮しなくても影響は小さいです。

高エネルギーの原子核反応は、デフォルトで3.0 GeV/nで、JQMDからJAMQMDモデルへと切り替わります。この切り替えエネルギーをejamqmdで変えられます。核子入射反応でも、eqmdnu, ejamnu,とこのejamqmdの値を調整すれば、JAMQMDモデルで計算することも可能です。

../../../_images/SwitchingEnergy.png

図 5.2.1 核反応モデルの切り替えエネルギー

INCL (Intra-Nuclear Cascade of Li`ege)は、核子、パイオン、軽イオン入射反応を記述する核反応モデルです。バージョン2.50から、明示的にモデルの選択を行わない場合、これらの入射粒子の反応に対しては基本的にこのモデルが使用されるようになりました。もし、本モデルを用いて得られた結果を発表する場合は、必ず下記文献 [2] を引用してください。

INC-ELF (Intra-Nuclear Cascade with Emission of Light Fragment)は軽イオン生成機構をもつ核反応モデルです。核子(陽子、中性子)と \(\alpha\) が入射反応の時に使用できます。本モデルを用いて得られた結果を発表する際は、必ず下記文献 [3] を引用するようにしてください。

JQMD, JQMD-2.0は核反応を記述するモデルで、特に重イオン入射反応を記述するのに優れています。バージョン2.70以降は、それまで使われていたJQMDに加えて、JQMD-2.0も選択できるようになりました。JQMD-2.0 [4] はJQMDを改良し、反応の記述をより合理的にしたモデルで、周辺衝突反応の扱いが特に改善されています。ただし核反応の計算にかかる時間が2倍程度長くなります。

表 5.2.45 iscinful

説明

(D=0)
0.1-150 MeVの中性子と炭素の核反応計算にSCINFUL-QMDのデータベースを適用するSCINFULモードのオプション。
=0
SCINFUL-QMDのデータベースを使用しない(核反応モデルを使う)。
=1
SCINFUL-QMDのデータベースを使う。この場合[data max]セクションで炭素のライブラリー上限エネルギーを0.1 MeVに設定する必要があります。詳しくはutility\usrtally\scinful-qmdをご参照ください。
表 5.2.46 lionprd

説明

(D=-1)
核データを使用した中性子入射反応における2次軽イオン(p,d,t,3He, \(\alpha\) )の発生をコントロールするオプション。
=-1
中性子のエネルギーが20 MeVからdmax(2)の間にある場合に、2次軽イオンを発生させる。
=0
中性子のエネルギーがdmax(2)以下の場合に、2次軽イオンを発生させない。
=1
中性子のエネルギーがdmax(2)以下の場合に、2次軽イオンを発生させる。
このオプションはe-modeを用いない時の中性子入射反応に関係します。使用する核データが軽イオンに関する生成反応断面積をもっていない場合 [5] 、このオプションは機能しません。中性子のカーマ係数(heating numbers)はこのオプションによって値が変わります。発生させた軽イオンの寄与の分だけその値が減少します。
表 5.2.47 epseudo

説明

(D=10.0)
荷電粒子核データライブラリーを使う際、ステップ幅中での最大断面積を与えるエネルギーを指定するパラメータ。このエネルギーを小さくすると、低エネルギー核反応の計算精度が多少上がりますが、計算時間が飛躍的に長くなります。
表 5.2.48 tsxcl

説明

(D=1)
飛跡構造解析モード時の核反応計算に関するオプション。
=0
飛跡構造解析モードで輸送される粒子の核反応を無視する。なお、KURBUCが使われているときはこれと関係なく、核反応は無視される。
=1
核反応を無視しない。