7.5. [ T-Deposit ] セクション¶
放射線による付与エネルギー(発熱)を出力するタリーです。 バージョン 3.05 以降、カーマ近似を用いた中性子や光子による付与エネルギーも計算できるようになりました。 カーマ近似の使用の有無は、イベントジェネレータモードや電子輸送計算の設定に従って自動的に調整されます。 詳しくは、 [parameters] セクションの emode 関連の説明にある ikerman 、 ikermap を参照してください。 ただし、中性子のカーマ近似が有効となるのは、核データを利用する dmax(2) 以下のみです。
荷電粒子による付与エネルギーを計算する場合は、ユーザーが usrdfn1.f や usrdfn2.f を変更して自由に定義できるファクターを乗じることができます。
ただし、この機能はカーマ近似や飛跡構造解析モードには適用されません。
サンプルプログラムとして、 usrdfn1.f には粒子の LET に ICRP60 で定義された \(Q(L)\) 関係を乗じて線量当量を導出するプログラムが、 usrdfn2.f には microdosimetric kinetic model に基づいて生物学的線量を導出するプログラムが入っています。
なお、これら既定プログラムを使う場合は、 letmat で水を指定する必要があります。
output=deposit とした場合は、ヒストリー毎の付与エネルギー分布を計算するため、検出器の応答を模擬することができます。 その際、ファノ因子などを指定することにより検出器の分解能も考慮可能です。 なお、 output=deposit の場合はカーマ近似による付与エネルギーが考慮されませんので、必ずイベントジェネレータモードや電子輸送計算を行うように設定してください。 また、 [weight window] などの使用により、1 ヒストリー内でエネルギー付与する粒子のウエイトが変わる場合は適切な結果が得られません。
value |
explanation |
reg, r-z, xyz, tet |
メッシュ型。 メッシュ型サブセクションが必要です。 |
value |
explanation |
all (default), 粒子名 |
タリーする粒子。 neutron や photon を指定した場合は、中性子や光子のカーマ近似による付与エネルギーがそれぞれ出力されます。 |
value |
explanation |
(省略可) |
タリーする物質を指定します。 |
all |
all が default で、未定義と同じです。 |
物質数 |
物質数を指定し、次の行で物質番号を定義します。 この値を負値にすると、指定した物質をタリー対象から除外します。 |
(次の行) |
2 5 8 のように物質番号を指定します。 |
value |
explanation |
(省略可) |
LET( \(dE/dx\) ) を評価する物質番号です。 省略時は実際の物質です。 物質を指定する場合の密度は、 [Material] セクションで定義された密度となります。 したがって、水に対する LET 分布を計算したい場合、 [Material] セクションで水の密度が 1 g/cm \(^3\) となるように定義する必要があります。 また、負の場合は電子・陽電子の \(dE/dx\) として 1 g/cm \(^3\) の水に対する値が参照されます。 |
value |
explanation |
(省略可, D=0) |
0: ファクター無し
1: usrdfn1 を使用
2: usrdfn2 を使用
サンプルプログラムとして、 |
value |
explanation |
1, 2, 3, 4, 5 |
エネルギーメッシュ。 メッシュサブセクションの定義方法は 6.6.1 章 を参照。 |
value |
explanation |
1, 2, 3, 4, 5 (省略可) |
時間メッシュ。 メッシュサブセクションの定義方法は 6.6.1 章 を参照。 |
value |
explanation |
dose |
荷電粒子のエネルギー付与をタリーします。 |
deposit |
ヒストリー毎のエネルギー付与分布をタリーします。 e-type サブセクションが必要です。 カーマ近似によるエネルギー付与は考慮されないので、必ずイベントジェネレータモードや電子輸送計算を行うように設定してください。 |
value |
explanation |
0, 1, 2, 3, 4, 5 |
0: Dose [Gy/source], output=dose のみ 1: Dose [MeV/cm \(^3\) /source], output=dose のみ 2: Dose [MeV/source], output=dose のみ 3: Number [1/source], output=deposit のみ 4: Number [1/nsec/source], output=deposit のみ 5: Dose [J/m \(^3\) /source], output=dose のみ |
value |
explanation |
0 (default), 1 |
output=deposit 選択時のエネルギー表示オプションです。 0: total deposit および各粒子の寄与の分布です。 通常はこちらを使用してください。 1: 各粒子の deposit エネルギー分布です。 ver. 2.81 以前の計算方法です。 |
value |
explanation |
(省略可) |
カーマファクタを計算する母核を限定します。 複数定義可能です。 カーマ近似を用いる中性子及び光子による線量計算に対してのみ有効です。 |
all, 数 |
all はデフォルトで、省略した場合と同じです。 数を指定した場合、その数だけの核種を次の行に記述します。 負の場合は、それらの母核を対象から外すことを意味します。 |
value |
explanation |
208Pb Pb |
質量数を指定すれば、その核を指定します。 質量数を指定しなければ、その核の同位体全てを指定します。 複数の母核群を指定したいときは、複数の [t-deposit] セクションを定義します。 |
value |
explanation |
eng, reg, x, y, z, r |
出力データの \(x\) 軸。 |
tet |
出力データの \(x\) 軸。 mesh=tet でのみ有効です。 |
xy, yz, xz, rz, t-eng, eng-t |
2次元表示。 |
t |
時間軸。 |
value |
explanation |
(省略可, D=part) |
画像出力ファイルで同じページに表示するデータの種類を指定します。 axis で指定できるパラメータを指定できます。 |
value |
explanation |
|
出力ファイル名を定義します。 これは axis の各設定に対して必要です。 |
value |
explanation |
(省略可, D=file) |
restart 計算で過去の tally を読み込むファイル名を定義します。 axis を複数定義していても、指定する resfile は1つだけです。 |
value |
explanation |
(省略可, D=1.0) |
規格化定数。 |
value |
explanation |
(省略可) |
タイトル。 |
value |
explanation |
(省略可) |
ANGEL パラメータ。 |
value |
explanation |
(省略可) |
ANGEL パラメータの特別な書式。 |
value |
explanation |
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 |
2次元表示のオプション。 |
(省略可, D=3) |
value |
explanation |
(省略可) |
\(x\) 軸タイトル。 |
value |
explanation |
(省略可) |
\(y\) 軸タイトル。 |
value |
explanation |
(省略可) |
\(z\) 軸タイトル。 |
[t-deposit] では、タリーする領域に入る粒子ごとの付与エネルギーを part= で指定して計算することはできません。 領域に入る粒子毎の付与エネルギーをタリーするには、 [counter] で part= を用いて、特定の入射粒子から引き起こされる付与エネルギーをカウンターで指定する必要があります。
output=dose で unit=0 とした場合、 [Gy/source] を単位とする吸収線量が出力されます。 mesh=reg の場合は、 volume パラメータを用いるか、 [volume] セクションにおいて各領域の体積を設定する必要があります。 ただし、吸収線量は不可算量ですので、各 \(x\) 軸に関する積分値は出力されません。 また、領域内に複数の物質が混在する場合、その領域の吸収線量は全体の平均値とはなりません。 例えば、領域 1 と 2 にある質量 \(M_1\) と \(M_2\) の物質にそれぞれ \(E_1\) と \(E_2\) の熱量が吸収された場合、その平均吸収線量は \(\frac{E_1+E_2}{M_1+M_2}\) ですが、PHITS で計算する値は \(\frac{E_1}{M_1}\frac{V_1}{V_1+V_2}+\frac{E_2}{M_2}\frac{V_2}{V_1+V_2}\) となります。 ここで、 \(V_1\) と \(V_2\) はそれぞれ領域 1 と 2 が占める体積を表します。
output=deposit で deposit=0 とした場合、 part パラメータで指定した粒子種の total deposit に対する寄与を出力します。 その際に、 part パラメータで all が指定されていない時は、自動的に all が追加されます。 一方、 output=deposit で deposit=1 とした場合、粒子種毎の deposit エネルギー分布が個別に出力されるため、各粒子種について得られた結果を足し上げた値と all を指定した結果は一致しません。
output=deposit で deposit=0 とした場合、 part=all 以外のタリー結果に対する統計誤差は、 istdev の値に関わらず、ヒストリー分散モードにより計算した標準偏差となります。
value |
explanation |
0 (default), 1, 2, 3, 4, 5 |
mesh=xyz かつ axis=xy,yz,xz の場合に、このオプションで領域境界(1)、物質名(2)、領域名(3)、LAT番号(4)を表示します。 gshow=5 は、 icntl=8 の場合にピクセル形式で物質色のみを表示します。 |
value |
explanation |
0 (default), 1, 2, 3 |
mesh=reg,tet かつ axis=xy,yz,xz の場合に、このオプションで領域境界(1)、物質名(2)、領域名(3)を表示します。 このオプションの下に xyz メッシュサブセクションが必要です。 |
value |
explanation |
1 (default) |
gshow または rshow オプションの時、領域境界を求める分解能を各辺 resol 倍します。 |
value |
explanation |
0.5 (default) |
線の太さを定義します。 |
value |
explanation |
(省略可) |
reg メッシュに対して各領域の体積を定義します。 このオプションの下に体積定義サブセクションが必要です。 ここで定義しない場合は、 [volume] で定義した値が用いられます。 reg= に ( ) を用いた特殊な領域指定を行い、この volume サブセクションを定義しない場合は、内部で定義された領域番号が input echo に出力されます。 |
reg vol |
体積定義。 詳細は [volume] セクションを参照してください。 |
value |
explanation |
72 (default) |
体積入力 echo における1行あたりの最大カラム数。 |
value |
explanation |
(省略可, D=9) |
xyz メッシュで material を定義した場合に、各メッシュの体積値を補正するオプションです。 0 は補正なしを意味します。 volmat の値は、1つの xyz メッシュ辺を何分割して走査するかを表します。 |
value |
explanation |
データ数 |
Dump機能により出力する粒子情報の数を定義します。 mesh = reg のみ有効です。 |
次行: データ定義 |
出力する粒子情報の順番を 表 6.7.1 に示す粒子情報番号で定義します。 |
value |
explanation |
0 (default), 1, 2 |
epsout=1 では、結果を eps ファイルとして出力します。
ファイル名は拡張子を |
value |
explanation |
0 (default), 1 |
2次元タリー出力の Bitmap 図を生成します。
このファイル名は拡張子を |
value |
explanation |
0 (default), 1 |
xyz メッシュのタリー結果を ParaView の入力形式で出力します。
このファイル名は拡張子を |
value |
explanation |
0 (default), 1 |
ParaView 用出力ファイルの形式。 0: ascii、 1: binary。 |
value |
explanation |
0 (default), 1, 2 |
foamout=1 では、数値データを OpenFOAM field data 形式で出力します。
このファイル名は拡張子を |
value |
explanation |
0 (default), 1 |
1でタリー出力結果をPHITS用HDF5ファイルフォーマットph5でタリーを出力する。ファイル名は出力ファイルの拡張子をph5に変えたファイル名。 |
value |
explanation |
part の数 (default) |
eps ファイルに表示する part の数を指定します。 このパラメータはタリー eps ファイルに表示する粒子数だけを制限し、数値データファイルには影響しません。 |
value |
explanation |
(省略可, D=-9999) |
i 番目の counter の最小値。 |
value |
explanation |
(省略可, D=9999) |
i 番目の counter の最大値。 |
value |
explanation |
(省略可, D=-9999) |
i 番目の history-counter の最小値。 このパラメータは batch variance mode の istdev=1 では指定できません。 |
value |
explanation |
(省略可, D=9999) |
i 番目の history-counter の最大値。 このパラメータは batch variance mode の istdev=1 では指定できません。 |
value |
explanation |
(省略可) |
r-z または xyz メッシュに対する座標変換番号、またはその定義。 |
value |
explanation |
2 (default) |
gshow または rshow を指定した際の lattice および連続四面体の境界線に関するオプション。 |
0 |
描画しない。 |
1 |
描画する。 ただし、ボクセルファントムの線は明瞭に描画されないことがあります。 |
2 |
同じセル内の線は描画しない。 |
3 |
同じ物質内の線は描画しない。 この場合、同じ物質で満たされた隣接セルの境界は、lattice や連続四面体でなくても描画されません。 また、 gshow>=3 の場合でもセル番号や LAT 番号は表示されなくなります。 |
value |
explanation |
(省略可, D=0.0) |
検出器の分解能を表すパラメータ 1 です。
output=deposit の場合のみ有効です。
dresol= \(\sigma_r\) 、 dfano=F の場合、各イベントの付与エネルギー \(E\) は標準偏差が \(\sqrt{\sigma_r^2+FE}\) のガウス分布に従って分散されます。
ただし、 dresol<0 の値を入力すると、エネルギー分解能は |
value |
explanation |
(省略可, D=0.0) |
検出器の分解能を表すパラメータ 2 です。 output=deposit の場合のみ有効です。 dresol= \(\sigma_r\) 、 dfano=F の場合、各イベントの付与エネルギー \(E\) は標準偏差が \(\sqrt{\sigma_r^2+FE}\) のガウス分布に従って分散されます。 |
value |
explanation |
(省略可, D=-1) |
STD cut off のしきい値。 |
stdcut を指定すると、PHITS は STD、すなわち標準偏差の値に応じて自動的 に計算を停止します。 この機能は stdcut が正で、 [parameters] セクションにおいて itall=0,1 を指定した場合に利用できます。 1バッチの最後に、タリー結果の STD の相対値がすべて 0 より大きく stdcut より小さい場合、計算は停止します。 2つ以上のタリーセクションで stdcut を設定した場合は、それらすべてが 条件を満たした時にこの機能が動作します。
value |
explanation |
(省略可) |
Lattice 内にある同一セル番号へのエネルギー付与量を各格子別に扱って統計処理したい場合に、その Lattice を定義するセル番号を指定します。 1 つのみ指定可能で、省略もしくは 0 が指定された場合は各格子別に扱いません。 output=deposit のときのみ有効です。 |
value |
explanation |
(省略可, D=1000) |
nlatcel を利用した際の 1 ヒストリー内で別個に扱うセルの最大個数です。 |
一般に fano factor は無次元量として定義されていますが、 dfano パラメータはエネルギーの次元をもつ量として定義されていますのでご注意ください。 例えば、Si 半導体検出器で fano factor を 0.1、一対の電子正孔対を生成するのに必要な平均エネルギーを 3.62 eV とすると、 dfano=3.62E-06 * 0.1 = 3.62E-07 となります。
reg = (100 200 300 ...) のような複数領域における付与エネルギーの総和を出力する機能の拡張として、条件に応じて重み付けを行う機能があります。 本機能を用いることで、指定した領域 \(i\) へのヒストリー毎の付与エネルギー \(E_{\rm history,i}\) に対して、条件に応じて異なる係数 \(\alpha_i(N_{\rm list})\) を乗じ、複数領域の deposit energy の総和 \(E_{\rm history}\) を算出します。
本機能はヒストリー毎の付与エネルギーに応じて重み付けを行う機能で、特定領域への付与エネルギーに応じて電荷収集効率が変化するような半導体ソフトエラー解析などに利用できます。
エネルギーや LET など粒子の条件に応じて付与エネルギーに重み付けを行いたい場合は、ユーザー定義重み付け関数である usrdfn1.f や usrdfn2.f を作成する必要があります。
本機能は mesh=reg のみ対応しており、 reg=weightsum とすることで動作します。
書式は次の通りです。
mesh = reg
reg = weightsum
ncond = 4
no cell operator ethres list
1 100 ge 0.1 1
2 100 gt 0.2 1
3 100 eq 0.0 2
and 200 lt 0.4 2
4 100 le 0.5 3
ncell = 5
cell list01 list02 list03 list00
100 0.0 0.5 1.0 1.0
200 0.1 0.6 2.0 1.0
300 0.2 0.7 3.0 1.0
400 0.3 0.8 4.0 1.0
500 0.4 0.9 5.0 1.0
まず、 ncond=m で条件の数 \(m\) を指定します。 この次の行には、条件番号 no 、領域番号 cell 、演算子 operator 、閾エネルギー ethres 、リスト番号 list のデータ順を定義します。 これらのデータの並びを変えるときは、この行で指定してください。 この定義文の下に ncond= で指定した数だけ条件を定義します。 条件は、1 ヒストリーにおいて、領域番号 cell への deposit energy が、閾エネルギー ethres に対して演算子 operator の関係を満たす場合、下記の ncell で定義するリスト番号 list の係数を使用することを意味します。 条件に合致するか否かのチェックは上の行から順に行うため、いくつかの条件に合致するヒストリーに対しては、先に指定した条件が優先されます。 全ての条件に合致しないヒストリーに対しては、 list00 に記載した係数が使用されます。 条件番号 no に and と記載することで複数の条件を設定できます。 領域番号 cell では、領域をまとめる ( { 2 - 5 } 8 9 ) という書式や、 ( 6 < 10[1 0 0] < u=3 ) などの lattice, universe 構造も指定できます。 ただし、単一の数字でない場合は必ず ( ) で括ってください。 演算子 operator では、 gt 、 ge 、 eq 、 le 、 lt の 5 種類を使用できます。 閾エネルギー ethres の単位は MeV です。
続いて、 ncell=n で総和を取る対象とするセルの数 \(n\) を指定します。 この次の行には、領域番号 cell 、リスト番号 listxx のデータ順を定義します。 これらのデータの並びを変えるときは、この行で指定してください。 この定義文の下に ncell= で指定した数だけ領域番号と係数を定義します。 こちらの領域番号 cell でも、領域をまとめる書式や lattice, universe 構造を指定できます。 単一の数字でない場合は必ず ( ) で括ってください。 なお、同じ領域番号を複数定義すると deposit energy が積算されますので注意してください。 list00 を定義しない場合、全ての係数の値がゼロに設定されます。