4.2. [T-Dchain]を用いた重要なPHITSの設定

本節では、DCHAINで適切な計算結果を得るために重要なPHITSの設定と、その意味をまとめる。詳細については、PHITSマニュアルの[T-Dchain]に関する説明も参照すること。

要点は次のとおりである。regメッシュを使用する場合は、[T-Dchain]で集計する各領域の体積を[Volume]セクションに指定する。xyzおよびtetメッシュでは体積が自動計算される。なお、[T-Dchain]はr-zメッシュをサポートしていない。また、[Parameters]セクションでは、jmout= 1e-mode= 0igamma= 3を設定する。file(21)にはDCHAINのデータフォルダー<PHITS-install>/dchain-sp/data/のパスを指定する。PHITSを推奨される標準パスへインストールした場合は、通常、file(21)の既定値を変更する必要はない。

jmout= 1とすると、PHITSは[Material]セクションの物質組成を原子数密度へ変換し、DCHAIN入力ファイルのTGNNDSCard 9b)として出力する。jmoutの既定値0では、[Material]セクションに入力した値がそのままDCHAIN入力ファイルへ出力される。しかし、[Material]セクションには質量分率または原子分率を指定することが多く、セル密度を考慮しない値をそのまま原子数密度として使用すると、体積当たりの計算結果が正しく規格化されない。このため、通常はjmout= 1を使用する。

[Volume]セクションへの体積指定は、Bqで表す全放射能などの絶対量を正しく規格化するためにも必要である。体積は、*.phtファイルの[Source]セクションに出力されるtotfactにも反映される。totfactは、二段階目のPHITS計算で線量評価や遮蔽計算を行う際に、線源強度を実際の物理量へ換算するために使用される。タリー領域の体積を指定しない場合、DCHAINは1 cm\(^3\)と仮定する。この注意事項はregメッシュに適用される。三次元格子のxyzメッシュと四面体のtetメッシュでは、体積が自動計算される。

e-mode= 0は、PHITSのイベントジェネレータを使用しない簡易サンプリングモードであり、既定値でもある。この設定では、20 MeV以下の中性子反応生成物は、[T-Dchain]が自動生成する[T-Yield]タリーへ含まれない。これらの生成物は、[T-Track]タリーで求めた中性子束とDCHAINの放射化断面積ライブラリを用いて、DCHAIN内部で計算されるためである。e-modeを1または2にすると、DCHAINのJMODEで中性子束(*.dtrk)または核種生成量(*.dyld)の一方を無視しない限り、中性子反応生成物が二重計上される。ほかのPHITS入力ファイルから[Parameters]セクションを流用する場合は、特にe-modeの設定に注意すること。

igamma= 3とすると、[T-Dchain]が自動生成する[T-Yield]タリーに、基底状態の核種だけでなく核異性体の生成量も出力される。igammaの既定値2では、核異性体の生成量は出力されない。DCHAINのISOMTRは、核異性体をDCHAIN内部でどのように扱うかを指定する。PHITSでigamma= 3とした場合、[T-Dchain]はDCHAIN入力ファイルにISOMTR= 0を設定し、各核異性体を個別に扱う。それ以外の場合はISOMTR= 2が設定され、核異性体を持つ核種の生成量が基底状態と準安定状態へ等分される。核異性体の生成比はPHITSで扱う方が適切であるため、igamma= 3を推奨する。